それから、あたしは。


沙雪姉ちゃんを本当のお姉ちゃんのように慕っていた。

そんな、平凡だけど楽しい毎日に…変化が訪れたのだ。


それは、あたしが19歳の春…沙雪姉ちゃんの家に住み始めて1年くらいたった頃だった。



「え、沙雪姉ちゃん…今何て??」

「だから…東京を出る事になったのよ。」


理由は、沙雪姉ちゃんの仕事の転勤。


仕方がない事だって分かってる。



でも…。



「あたし、これからどうしたらいいの…??」

やっと、東京の空気に慣れたのに。

やっと、標準語喋れるようになったのに。


もう…終わりなの??


また、あの大嫌いな母親が住む町に戻らないといけないなんて考えられない…考えたくない。


それにまだ、直宏にお礼も言ってない。


始まった…ばっかりなのに…。


「…ごめんね、花梨。」

「沙雪姉ちゃんは悪くないよ、もともとあたしが迷惑かけてるんだし。」