山口は生徒が全員席に着いたことを確認すると、持って来たプリントを配り始めた。それを手にした生徒は一様に顔を顰めた。一部の生徒を除いては。

そのプリントが多江の元に回って来た瞬間、どくんと心臓が跳ねた。これは――中間試験の範囲。


「まだテスト週間には入ってないが、今回は特別に早めにテスト範囲を知らせることになった」


中間試験の教科別に試験範囲が書かれたそれを、多江はじっと見つめた。大体の試験範囲は分かっていたつもりだから、試験勉強はする予定だった。けれど、明確に試験範囲が分かるのなら、それに越したことはない。
多江は思わず口元を歪めた。


「来週のテスト週間から勉強するのもいいが、今日から勉強するのもお前らの自由だ」


ほとんどの生徒が文句を零す中、亜子だけはどこか拍子抜けしたような表情で、そのプリントを見ていた。