確かに、亜子のように静かで大人しく、それでいて眼鏡まで掛けていたら、槙の言うように賢そうには見える。
でもそれは見た目の話。


「ああいう秀才っぽい人って、逆にバカそうだよ。ね、多江?」

「そう? あたしよく分からないけど」

「それよりも千波が〝秀才〟って言葉を知ってたことにびっくりした…」

「ちょっと槙ちゃーん、それってどういう意味ー?」


そのままの意味、と槙が告げる前に、教室に誰かが入って来た。今度は生徒ではなく、二年二組の担任だった。


「ほら、さっさと席に着け」


乱暴に言葉を発した担任、基、山口義貴に、今まで席に着いていなかった生徒は慌ただしく席に着いた。それとほぼ同時に、ホームルームを知らせるチャイムが鳴った。