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秋本多江(あきもとたえ)は悩んでいた。中学校までは学年トップの成績を収めていた多江だが、聖泉高校に入学してからというもの、学年トップを得られなくなっていたからだ。

クラスではトップに居る、それなのに学年でトップになれないということは、自分よりも点を稼いでいる生徒が居るということ。

聖泉高校では順位の発表はされない為、誰が何位に居るか、というのは相手から聞かない限り分からない。各クラスの生徒に訊ねれば分かるだろうが、それは彼女のプライドが邪魔をする。

どれだけ勉強に励んでもそのトップの生徒を越えられず、毎回順位は二位止まり。それでもいい成績ではあるが、彼女はそれを許さないらしい。

あたしが一位になれない――そんな屈辱はもう味わいたくない。学年も上がり二年になった多江は、去年よりも勉学に勤しむことにし、肩まであるゆるく巻かれた黒に近い茶色の髪を揺らしながら、二年二組の教室に入った。