香美が困ったような笑みを浮かべながらそう言ったあと、亜子は目を見開いた。


「そう…なの?」

「そうなの」

「…そうなんだ」


少しだけ目線を下げた亜子に、香美はふ、と息をついた。亜子の発言は決して嫌味で言っているわけじゃないことを、香美は知っている。でもそれがいつか、亜子にとって良くないことに繋がるんじゃないかと、たまに考えることもある。その為に、香美は亜子と一緒に居るのだ。もしものときに、亜子を守れるのは自分しか居ないと分かっているから。


「それで、範囲が狭いから、テスト勉強を早めにする必要はないかもって思ってるってことね?」

「うん…でも、やっぱり念には念を入れてやっておこうかな……」

「そっか…。じゃあ、今日さ、亜子ん家行ってもいい?」

「え…?」

「勉強するんでしょ? 一緒にやろうよ。ついでにわたしに勉強教えて?」


首を傾げながら両手を合わせて自分にお願いをする香美に、亜子はつい可笑しくなり、小さく笑って了承をした。