英知は、そうだったんだ、とつぶやくと、お守りを握る手に力を込めた。


「―――彩は、無神経だよ…」


「え…?」


英知は彩を睨んだ、つもりだった。
だけど実際は声が震え、睨むどころか、きっと駄々をこねる子供のような顔になっている。


「俺…嬉しかったのに」


例えそれが弓道のお守りで、野球部の英知に渡すには見当違いだったとしても、彩からの贈り物には違いないから。
彩が英知を応援するためにくれたんだと思ったから。


「彩がくれたから、嬉しかったのに…」


「違うよ。
啓吾が英知に渡せって言ったんじゃなくて―――」


「そういうことじゃない!
そう思ってること自体が無神経なんだよ!」


英知は吐き捨てるように言った。


「兄貴にもらったなら俺に渡すな!
こんなもんいらねぇよ!」


英知はお守りを地面に投げつけた。
彩は呆気にとられて何も言えない。


しばらくしてからひどい、とつぶやき、地面に落ちたお守りを拾い上げて英知を見た。