「―――彩は、俺を応援してくれるんだ…」


「何言ってんの、当たり前でしょ」


彩は笑って言った。


「―――それって、試合以外でも有効だったりする?」


英知は祈るようにつぶやいた。


彩は英知の言う意味がいまいち分からず、少し考えてから真剣な顔で頷いた。


「そりゃ、もちろん…」


そう言った途端に英知が悲しそうに笑うのが見え、彩は疑問を覚えた。


「英知…?」


「本当に俺の応援してくれるなら、今だけ兄貴のことを忘れて…。
ただ、一人の女の子として話を聞いて欲しい」


啓吾を忘れて、という部分がひっかかる。
この間のデートの説明や謝罪をするだけなら、そんなことを念押しする必要なんてない。


だけど、英知の目は驚くほど真剣で、どういう意味か聞き返せる雰囲気でなかったから、彩は黙って頷いた。


英知は今にも泣き出しそうな顔で彩を見つめる。


「―――本当にいい?
彩の聞きたくない話かもしれない…」


彩は今度は迷わず頷いた。


「いいよ。
英知が私の聞きたくない話をするとは思えないから」