「マジカルな力が宿ってるんだって。
弓道のお守りだから野球に効くか分からないけど、ないよりマシでしょ?」


英知はおもむろにそれを受け取ると、その草鞋のような外形をしげしげと見た後、苦笑した。


弓道のお守りならば当たるように、という願いが込められているに違いない。
それをなんのためらいもなく、敵の当たりを恐れるピッチャーの英知に渡すところが彩らしい。


「ありがと。
すっげー嬉しい」


英知は満面の笑みで言った。


彩がたまらなく好きだと今、再確認した。
同時にどうしても彩が欲しいと思った。


啓吾のことなんて関係なく、大切なのは自分の気持ちだ。
その気持ちを彩に伝えなければ意味がない。


告白できないのは、彩を困らせたくないから、というきれいごとで言い訳していただけだ。


結局、彩に伝えなければ何も始まらないし、終わらせることもできない。
たとえ困らせるだけだったとしても、思いを伝えたい。


英知は静かに視線だけをお守りから彩に移した。