結局電話に出なかった。
電話が切れたと同時に
「あっ五十嵐くん!こんなとこにいたのー?」
同じクラスの女が思ったよりでかい声で話しかけてきた。
その声に伊吹が振り返って一瞬目があった。
…えっ?
一瞬だったけど分かった。
目が、伊吹の目が少し悲しそうに揺れてたことに。
そして何もなかったように前に向き直った。
何だよ、あの目は。
何であんな目したんだよ。
「五十嵐くん?もーすぐでリレーだから呼びに来たんだよ♪」
「あぁ。」
腕に手を回されたけど、どーでもいい。
俺の頭の中はいつだって伊吹でいっぱいなんだ。