………無駄な努力だった。


どうしよー…
人が少なくなるまで待つか…



「どうしたの?」

「…えっ?!」



悩んでたら、声がした。

声がした方を見上げると、高い身長の男の子がいた。



「…見えないの?」

「!!……はい」



笑った…
この人、私の身長見て笑った。

…なんだか、やな印象。



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「名前、なんていうの?」

「え…」

「名前。探してあげる。」



その人はニコッと笑った。


わっ…!
この人、ちゃんと見たらすごいカッコイイ…。

か、顔赤くなってないかな?



「あ、あの……高下涼…です」

「高下涼………あ、C組だよ」



その人は私を見下ろしながら、またニコッと笑った。



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「あ、…ありがとう」

「いーえ。…じゃ」



最後まで爽やかに締めてその人は去っていった。



「あ…」



名前、聞けばよかった…。

…でも、いっか。
あういう人と関わると、ロクなことないよ、ね。



私はうんうん、と1人納得して教室に向かった。



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          -第1話-
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高校に入学してからもうすぐで1年が経つ。

早いなあ。


今は春休みで学校は休み。



それにしても…



「暇だなぁ…」



一緒に遊びに行く友達もいないし、私はずっと家にいた。

…宿題もないし、どうしよ。




「……………」



ふと、机の上のスケッチブックを手に取った。

ペラッ…と一枚めくると、…入学式の時の彼の姿。



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私は入学してから美術部に入った。

部員は私含めて6人で実際活動にくるのは私と部長くらい。


そんな中で活動絵を描いてるとき…見つけた。

美術室の窓から見える、彼。


サッカーの練習してた。


私が知ってる彼の情報は、サッカー部ってことだけ。

名前もクラスも知らない。



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だけど…

そんな彼の姿はあまりにもキラキラしすぎてて、爽やかで、カッコ良くて…、私が持ってないものをたくさん持っていた。


だから、描きたくなった。
形に残したくなった。



それから、毎日美術室の窓から見える色々な彼を描くのが私の日常になった。



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見てるだけで、いい。

描いてるだけで、いい。





本当にそう思ってた。

あんな素敵な人と関わると、
良いことなんかないんだって
私自身が1番知ってるから。



なのに…

彼は簡単に私の心を奪っていったんだ。




これはまだまだ先の話だけど…



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春休みも終わり、いよいよ高校2年生の始業式を迎えた。


去年の今頃と同じような雰囲気に、少し戸惑う。



あの様子じゃ、またクラスは見えないな。

少し待とう。




数分後、次第に人は減っていったのでクラスを見に行ってみた。



…今年はA組だ。


私はちらっと出席番号が隣の人を確認した。

…席、隣になるから。


私の名前の隣には“津島翔”と書いてあった。

聞いたことないなぁ。
どんな人なんだろ?



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