階段を降りて、廊下を少し歩いたところで私と加奈は立ち止まる。
「う…わぁ」
生徒用の昇降口に溢れかえる人、人、人。
ぶかぶかの制服を来た小柄な男子がラグビー部に囲まれていたり。
きゃぴきゃぴした女の子達が親しげに先輩っぽい男の子に話しかけていたり。
一人でも多くの部員を獲得しようとどこの部も必死な感じで昇降口を埋め尽くしていた。
押されながら前に進む。
「加奈」「い、るよ」
後ろについてきてるようだ。
いろいろなユニフォームの先輩達が配るビラを作業みたいに受け取り、やっとのことで靴を履き替える頃には両手に大体の部のビラが揃ってた。
「うう…断れなかったー…」
と言い、加奈はバレー部のピンクのビラを何枚も重ねている。
整理しつつあらためてビラを見た。
『ラグビーで青春』
『袴美人に会いにきてね』
『女子マネ募集!!』
空手部のビラはない。
「ねぇ、空手…」
あった?と続けるつもりで顔をあげると。
「Welcome!空手ー!!」
「…は?」
妙に発音がいい空手着をきた男が満面の笑みで立っていた。
……えーと。
目線を合わせづらくて下を見た。
空手着からのびた素足、にスニーカー。
素足にスニーカー。