ひどく場違いな、白いフリルの付いたドレスに身を包んだ社長令嬢の結衣が、満面の笑みで立っていた。


 そして呆気に取られた俺を押すようにして、結衣はアパートの中へ上がり込んでしまった。


 結衣をアパートに連れて来た事はもちろん一度もない。住所だって教えていない。それなのに来れたという事は、俺の事を調べたのだろう。社長令嬢ともなると、何でもアリか?


 どうせこんな狭くて汚いアパートに長居なんか出来ないだろう。そう思いながら、俺は布団を脇にどかし、折りたたみのテーブルを畳の上に出した。お茶でも入れようと思い。


 すると結衣は、手提げ袋をガサガサとやり、テーブルの上に綺麗にラッピングされた薄い箱を置いた。