俺は社長令嬢と付き合いだした男という事で、職場のみんなから羨ましがられ、妬まれた。


 同期で親友の片岡だけは、俺に遥という恋人がいる事も、こうなってしまった経緯も知っていたが、それでも結衣に乗り換えた方が徳じゃないか、などととんでもない事を言い出す始末だった。


 結衣には、俺には遥という、結婚を控えた恋人がいる事をちゃんと説明したのだが、それを結衣はまったく意に返さないらしく、なおもシツコク俺を誘って来た。どうやら結衣は、欲しいものは何でも手に入ると思っているらしい。


 結衣の誘い、と言っても食事やお茶だけなのだが、をキッパリ断る事が出来ず、まるで二股をしているような日々を送っていたある日の休日に、あの事件は起こってしまった。