あの事とは……

 俺はあの事をおそらく一生忘れる事はないだろう。そしてそれを仕組んだ結衣を、一生許す事はないと思う。


 結衣とは、会社の創立記念パーティで知り合った。知り合ったというのは少し違うな。出会った、いや単に会ったと言うべきか?


 俺は乾杯の時に飲んだシャンパン1杯で酔ってしまい、熱くなった顔を、パーティ会場の外のバルコニーで冷ましていた。手摺りに寄り掛かり、一服しながら。春先で、夜風がひんやりとした、星の綺麗な夜だった。


 携帯の吸殻入れにタバコの吸殻を入れ、そろそろ会場へ戻ろうかと思ったら、会場の中から、派手な水色のロングドレスを着た女が、こっちに向かって歩いて来るのが見えた。


 一目で従業員ではないと分かる、飛び切りゴージャスな女。それが、社長令嬢の結衣だった。