とっくに車なんか見えないのに、俺は車が走り去った方向を呆然と見ていた。

 クソッ。結衣のやつ……

 目に涙がジワッと溢れてきた。悔しいと、涙が出るんだな。サングラスを掛けていて正解だったようだ。


 そんな事を考えていたら、

「やっぱりいたんだ、彼女……」

 と呟く女性の声がすぐ近くで聞こえ、俺は思わずそちらへ顔を向けた。そこには、ショートヘアがよく似合う、ボーイッシュだが可愛い顔をした女が立っていた。俺と同じく、車が行った方向を、呆然と悲しそうに見つめながら。