「何か楽しい事でも思い出しましたか?」


 しまった。顔に出てたか……


「いいえ、別に……」


「結衣は貴方も知っての通り、甘やかされて育ったお嬢様ですが、従兄の私達にとっては妹も同然なんです」


「はあ……」


「どうか結衣を幸せにしてやってください。この通りです」


 一条海は、俺に向かって深く頭を下げた。平社員の俺が、仮にも副社長から頭を下げられたわけで、背中がむず痒い感じがしたのだが……


「もし結衣を不幸にしたら、私達は貴方を許しませんよ」


 頭を上げて俺を見た一条海の目は、氷のように冷たかった。