「結衣は急ピッチで家事を覚えて行ったはずですが、それはなぜか知っていますか?」


「あ、いいえ。俺も彼女に教えはしましたが、それ以上に彼女は上達していて、実はそれが不思議でした」


「それはそうでしょう。あんたが会社へ行ってる間、結衣はうちの家政婦から家事を習っていたんですから」


「え?」


「俺は毎日、結衣を俺の家に送り迎えしてました。結衣に頼まれてですが。それをあんたは、結衣が浮気していると、誤解したわけです」


「知ってたんですか!?」


「はい。秋から聞きました。聞いてもなお、俺は本当の事を言わなかった。
わざと嫉妬させようと思った。あんたにも、秋にも。しかし、それがまずかったようです」


「あ、いや、それはどうかな……」


 俺は確かに嫉妬した。激しく。そしてその事で、結衣への気持ちに気付く事になったわけで、その意味では効果があったと、言えるのかもしれない。