定時になり、俺は早々に帰り支度をして職場を後にした。


 会社のビルを出ると、一条海が指定した喫茶店はすぐ目の前にあった。陸というのは、どんな男なのだろうか。気が短いとの事だが、むしろその方が有り難いと思った。長々とねちっこく非難されるより、さっさと何発か殴られ、あっさりとケリを付けてしまいたい。


 喫茶店に入り、店内を見渡すとすぐに、茶髪の若い男が目に止まった。向こうもこちらを見ていたが、その男は同じ茶髪ではあるが、思いも寄らない人物だった。


 結衣の浮気相手が、なぜここに……?


 俺はつかつかとその茶髪男に近付き、立ち上がったその男の胸ぐらを掴み握り拳を振り上げた。