「それについては、私ではなく陸に言ってください。結衣も、陸に言われれば従うはずですから」


 あ、そういう事か。

 結衣に『積極的に迫れ』とけし掛けたのは、一条海ではなく弟の陸という男なんだな。という事は、『亭主に謝れ』と言ったのも、その男か……


「その陸が、あなたと話がしたいと言っています」


「え?」


「早速今夜、いいですか? あなたには、陸に会う義務があると思いますよ」


「いいですよ。分かりました」


 陸という男と、終業時刻のすぐ後に、会社の前の喫茶店で会う事になった。