「その陸が、離婚の事を表沙汰にする事に待ったを掛けています」


「なぜ?」


「分かりません。まったくもって、分かりません。と言うのは、陸は私よりも更に結衣と仲が良いのです。年も一つしか違いませんしね。あなたと結婚した結衣を、陸は誰よりも心配していた。そしてやつれて行く結衣を見て、怒っていた」


 “やつれて行く結衣”という一条海の言葉に、俺の胸はキリリと痛み、「すみません」という言葉が口から漏れた。そんな俺に一条海は、一瞬だが驚いた顔をした。


「私としては、さっさと離婚の手続きを済ませ、結衣には新しい人生を歩み出してほしいんですがね……」


「では、離婚届は、まだ……」


「結衣が持っていると思います」


「そうでしたか……。早く役所へ出すよう、副社長から言ってください」