俺は椅子から立ち上がり、結衣に背を向け息を整えた。そして、わざと冷たい口調で言った。


「俺はおまえの事、もう嫌いじゃないよ。でも、好きにはなれそうもない。悪いけど」

 と。そして、結衣が何か言い掛ける前に、


「俺が帰るまでに、この家を出てってくれ。俺も住む所が見つかり次第、ここを出るから、社長にそう言っておいてくれ」


 そう言い放ち、鞄を引っ掴むと足早に玄関へと向かった。背後で聞こえた「待ってください」という、結衣のか細い声を無視して……