結衣は、俺の企みを知っていた……

 俺は結衣の事を、何も知らない頭の悪いお嬢様だと思っていたが、頭が悪いのは、むしろ俺だったって事か。


 (俺はもうおまえの事、嫌いじゃないよ。それどころか、好きで好きでたまらないよ)


 そう言ってやりたい気持ちを、俺はグッと堪えた。結衣がいい女だと分かり、ますます好きになった。しかし……、いや、だからこそ、俺は別れてやらないといけないんだ。


 結衣は、俺なんかと一緒にいてはいけない女性なんだ。俺と結衣は、生まれながらに住む世界が違っていたんだ。出会った事が間違いだ。俺では結衣を、幸せには出来ない……


 ああ、クソッ! 涙が出て来やがった。