◎Side 柊哉
「……何て言った?陽菜」
しばらく、声も出なかった。
空っ風が頬を刺すベンチに座る、俺と陽菜の間の空気だけ、固まっていたから。
「聞こえなかったの?柊哉が好きなの。愛波ちゃんなんかより、私にしてよって言ったの」
「なんかって……」
「なんかだよ!!」
陽菜の突然の大声に、悪い事した子どもみたいな気持ちになる。
「対したことない普通の子じゃん!たまたま告った時に柊哉に彼女が居なかっただけで、彼女になっちゃうなんて、ズルいじゃん!!」
「やめろよ、そんな言い方……」
陽菜らしくない。
弱々しく答える俺は、陽菜の唇が震えているのに気づいた。