「待った?」

僕が辿り着いてから

間もなく

満面の笑顔で彼女は現れた

今まで見たことのないジャージ姿だった

「こんな格好でごめんねぇ」

バレーボールをしに行くという理由で

出て来たのだという彼女は

確かに僕の隣

僕の車の助手席に座っていた

胸の高鳴りが一層激しくなる

僕は彼女にそれを

悟られないようにすることで必至だった

「早く行こう」

僕は小さく深呼吸をして

車を発進させた


彼女はどんな気持ちなんだろう

一目を避けるため

市街地ではなく

山の方へと車を走らせる

思うように会話も弾まない…

僕は彼女といる

それだけで、嬉しいが

彼女はそうじゃないだろう

必死に自分の引き出しを

あるだけ開き

会話を切り出す

彼女は笑顔で答えてくれる

僕の中で確立した彼女への想いは

次第に大きくなっていく

でも、彼女は結婚していて

子供もいる

そんな葛藤をしながら

何とか彼女との会話を成立させていた