なぜだかさっぱりわからないけど、同期の長谷川くんの顔があった。


「は……? いきなり何!?」


驚く私を余裕でスルーして、掴んだ私の腕を離すことなく、長谷川くんは階段の入り口でIDをかざし、施錠を解除した。


「奥脇さん。ソレ。俺を笑わせようとしてる?」


短い電子音の後、滅多に使われることのない階段の入り口付近で、ようやく振り返った長谷川くんが、冷めた瞳を私に落とす。


「それとも……。俺の商談をブチ壊したいとか?」


私の腕を放り投げるようにして、長谷川くんは壁にもたれながら腕を組んだ。