「響兄、その妖精って……。桜の模様の着物を着てて、赤い帯をしてる女の子?」

「え……?」


梨恋の言葉に、カズハと俺が同時に顔を上げた。


「お主、わしの姿が見えるのか?」

「う、うん。響兄が梨恋の頭に手を置いた時に、女の子が見えるようになった……」

「……そうか。つまり、俺が触れていれば、梨恋にもカズハの姿が見えるってことか?」


なかなか不思議な現象だと思う。


たまたま俺が、カズハにとって初めて深く関わる人間で

たまたま俺が、満月の日に月美丘に行った。


たまたま俺が未成年で、たまたま俺が、梨恋の兄だった。


偶然が重なって、重なって……

今、カズハの存在を確実に知ってる人間が2人になったんだ。


目の前で嬉しそうに瞳を輝かせる梨恋を見ると、本当に2人が会えて良かったと思う。

「そっかぁ。カズハちゃんは桜の精だから、梨恋は最初に見れなかったんだね!」

「そうじゃ!リコがわしの姿を見ることができるとは……。
わしも本当にびっくりじゃ!」


そう言って、カズハも嬉しそうに笑った。