「梨恋、この桜が綺麗だって言ったよな?」

「うん」

「この桜が綺麗なのはさ、この木に妖精がいて、桜が綺麗に咲き続けるように……って守ってくれてるからなんだってさ」


そこまで話すと、梨恋は目を見開いた。


「響兄、妖精って……。どういうこと?」


「どういうことって言われてもな……。一昨日言っただろうが。俺は妖精を信じてるって。

だから思うんだよ。こんな綺麗な桜には、きっと桜の精がいるんだってな」


俺は、梨恋に近付きながら話した。


「きっとさ、背が低くて、ピンクの着物を着てて……。三つ編みで、童顔で、変なしゃべり方をするような妖精がいるんだよ。
そう考えたら、面白くないか?」


そう言いながら、俺は空いてる方の手で梨恋の頭を撫でた。


梨恋が、今までに見たことがないくらいに、目を見開く。