『因』

つまりそれは……


「この前、お前はざっとしか話してくれなかったからな。
いまいちよくわかりきってなかったんだよ。状況が……」


静かにそう言った潤の声が、何もない屋上に響いた。


「梨恋に、聞いたのか?」

「あぁ。聞いたらさ、よくわかったよ。
あの時はもっと軽く考えててさ、俺の初恋の話でもすれば、また元気になるんじゃねぇか?とか思ってたんだけどな……」


潤は、苦笑いをしながら俺に背を向けた。

そして、そのまま少し空を見上げる。


「結局同じ……ってか、響の方が深刻かもな。パンジーと桜じゃ、覚悟も何もかもがだいぶ違うし」


そう言うと、潤はまた軽く笑った。


ほとんど息しか出ていないような笑いは

あまりにも軽くて、虚しい。


俺達を間接的に繋ぐ境遇は、あまりにも似ていて……


でも、あまりにも似つかない。


「でもさ、いつまでも凹んでるわけにはいかないことくらい、響自身が1番よくわかってるんじゃないのか?」