いきなり、俺に背を向けたままの潤が言った。


表情が見えないから、何を思ってそんなことを言っているのかわからない。


「何なんだよ……。いきなり。わけわかんねぇから、順番に説明しろよ。

現代文の先生も言ってたじゃねぇか。『人間は、因果関係が上手く成立していない出来事を上手く理解することはできません』ってさ。

俺も人間だから。因も果もない文章はわかんねぇんだよ」


こんなにも長く、丁寧に話したのは久しぶりかもしれない。


内容はひねくれていて、どうしようもない感じだったけど……


それでも何故か、少し清々しい気分になった。


「そうかよ……。残念ながらさ、俺も人間なんだよな」


潤が、こっちを振り向きながらそう言った。


「そんなの見ればわかる。だから何?」


「俺だって因果関係の成り立ってないことは上手く理解できねぇんだよ。

いきなり教室飛び出して、いきなり凹んで、いきなり愛想がとてつもなく悪くなる奴の心情なんて、理解できねぇだろーが!」


声を張り上げてそう言った潤を見て、俺は思わず目を見開いた。


今までは、どんなことがあっても

潤が怒りを全面的に出すようなことはしなかった。


いつも笑ってばかりの、煩い奴だった。


「俺さ、見ちゃったんだよ……」