フワリ、と
ヴェールを広げて空間を作りつつ
生方はあたしの前に
どこかの騎士の様に片膝をついて
ブーケを持つあたしの手ごと
生方の手の中に包んだ。
「……このポーズなに?」
「オーナーの指示です、騎手っぽくないですか?」
確かに、この方が
プロポーズしているような
騎手っぽく見える。
「このまま、1分くらい見つめ合うだそうです、出来れば笑顔で……」
うぅ、女優じゃないから
それは無理〜
「伊織さん」
生方は、笑顔のまま
あたしを見つめる。
「はい……」
「今日は、撮影に突き合わせてしまって申し訳ありませんでした」
「……それについては後日お説教です」
「えっ、そんなぁ、オレ頑張ったのに」
「頑張ってるわよ? 生方は、……だからちゃんと叱ってお勉強させるの」
「! はい、ありがとうございます 」
言った意味をわかってくれたのか
嬉しそうに立ち上がって
生方は、あたしに手をさしのべる。