「は、はい、……何度かお使い頼まれました、とっても優しい先輩です」
郡司さんは、優しいけれど
少し近寄り難いオーラがあって
あまり得意じゃない。
ホントはもっと
素敵な人がいるけど……
「いいなぁ、営業補佐だから会ったことないし~」
「何言ってんのエナ、この前久我さんと由木さんにメロメロしてたくせに~」
「ソレはソレ、コレはコレ! イイ男の情報は、常に持っておかないとね?」
お酒の力なのか
先輩のいない同期会だからなのか
宇佐美さんも新井さんも
研修の時とは違ってくだけていて
驚いてしまった。
「……」
周りを見ると
みんな同じように出来上がっていて
楽しそうにそこかしこで高笑いや
部署での話しに夢中になっていた。
唯一、静かなのは
左隣にいる枝野くんだけ……。
あっ、そうだ!
「枝野くん?」
「ん? なに、千川さん」
「さっきは、ありがとうございました」
アタシはメニューを胸の前にかざして
彼を見上げた。