そう、私は泥棒被害にあったのだ。

だが私が盗まれたのはお金や貴重品などではなく『夢と現(うつつ)の境界線』だったのではないか。

泥棒に入られた記憶は現実のような夢であり、夢のような現実でもあったのだ。

だから私はあの記憶が夢だったのか現実であるのか判別できなくなっているのだ!

その事に思い至った時である。

私以外誰もおらず閉め切った密室状態のはずのこの部屋の私の背後に人の気配を感じた。

何気なく振り返るとそこにはいつの間にか男が立ってた。

野球帽にサングラスとマスク、それにモスグリーンのジャンパーを身につけた不審者丸出しのその男は金属バットを振りかぶっていた。

「えっ?」

私がそれらを認識した瞬間、男は私の頭めがけてバットを降り下ろした。