水槽の横に、無造作に引き上げられたマリーが誰にも気にも止められずにいました。

 マリーの目から、涙がこぼれました。少年と別れがたくて、流す涙でしたが誰も気づくことはありませんでした。だって、ロボットですから。水滴に気づいても、それは湖に飛び込んだときのものだと思うのでした。



 「ご苦労さん、マリー。君はいつでも完璧だね」



 スタッフがつぶやきながら、マリーを抱えて、スタジオの電気を落としました。

 真っ暗なスタジオの中には、大きな水槽が静かに水をたたえるだけでした。



                      おしまい