一陣の風が、少女の帽子を、ぽーーんと飛ばして、湖の中ほどに連れ去ってしまいました。



 少女は、飛んでいく帽子を見ながら、とても、とても深い悲しみを見せました。

「ぼくが、とってきてあげる」

「いいの、いいのよ。だいじょうぶ。あなたはロボットだから、防水加工をしてあるか知ってるの?」

 少年は、首を振りました。

「わたしは、あなたを失いたくないの。これでも、泳げるのよ」

「本当に?」



 少女はにっこり笑うと、とても楽しかったわ。と少年に言いました。



 少年はどきりとして、

「帽子は、あきらめてよ」

と、お願いしました。

「あれは、大事なの。とてもね……」

 少女は、大人びた笑顔を一つ残して、湖に飛び込みました。

 少女の白いワンピースが、美しい花びらのように舞いました。