はじまりはほんの気まぐれで。
気持ちなんて、
ましては愛なんてなかった。

フラれるなんてかわいそう・・・とかいう同情だったのかもしれない。
人を傷つけたくない。
悪者になりたくなかったのかもしれない。

付き合いだして二週間。
この14日間
義務的だけど一緒にいるのが当たり前になった。
でもそこには重苦しくなく、楽しい時間が流れる。

なにか温かい何かでつながってるような。そんな感じ。


でもそれは思ってた以上にもろくてはかなくてあっさりと壊れていった。

祐樹side

*野田千秋*
隣りのクラスのちょっと強気な女の子。
真っ黒の髪を横でで二つにむすんでる。
毛先がくるんと丸まってて猫みたいだ。

はじめてしゃべったのは入学式。


高校生活一日目。
桜が舞い、みんなが新しい学校生活に心おどらすなか、俺はひとり寒気と頭痛と熱と戦っていた。
風邪をひいたのかな
やっぱ昨日哲也(てつや:友達)にかりたマンガを夜中まで薄着で読んでたからか・・・!!
止まんなかったんだよ~~
仕方ないじゃん
ああああぁ神様・・・
  いくらなんでもひでぇよ・・・・。

「きゃあー!!川口君かわいい~!」
「ちいさーい」
「ホントに栗色の毛してる!!」
「目ぇおっきーい 女の子みたい!!」

こっちの事情を知らない女子たちが俺に向かって言う。
いや、詳しくは俺のスクバのポケットから覗くケータイについたクマの人形に対してだが。
このストラップは前に姉ちゃんがくれたものだ。家庭科の授業で作ったらしい。
栗色の毛に赤いリボンを首にまいて小さい顔に大きすぎるような目。
俺をモチーフに作ったらしいから可愛らしいけど性別は男。
不格好だが愛嬌がある。
うん こいつのことに間違いない。
(↑違う)

てきとうに笑顔で答えてから人ごみを抜け出す。
人気のないところにいこう。

ドンッ!!!

「・・・・ったあ」
「いっ・・・て」

誰かとぶつかった。

ちょっと甘い柑橘系のにおいがはじける。

黒い瞳に黒い髪。

それが、千秋だった。