千秋side

それは、高校生になって初めてむかえる夏休みの一週間前のこと。
二時間目の終わりのチャイムとともに彼は私の目の前に現れた。
「の・・・っ野田さんっ!!」
静かな教室とは明らかに場違いの大声で名前をよばれ、きょとんとなった。
・・・・ちがうかな。
名前をよんだ人が学年1モテる川口祐樹だったからびっくりしたんだ。
薄いブラウンの髪。
小さな顔に大きな瞳。
女の子さながらに長いまつげ。
背はわりと小さ目でわたしと変わらない。
なんか、かっこいいっていうより可愛い感じの男の子。
隣りのクラスの噂の王子様。
「ずっと好きだったんだ。付き合ってください。」
「・・・・え!?」
思考回路停止。フリーズ。ううんショートした。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
まって・・待って待って
「あっ!わかった!これ夢?」
「ちがっ・・・」
ほっぺたつねったらさめるかな?
「・・・・ぃった~~~!!」
ゆ、夢じゃないの!?
「あっ!!そうか罰ゲームでしょー」
「ちがっ!!!」
目の前の顔を見ると本気で泣きそうになってた。
あ、やっぱりカワイイ・・・・
・・・・・っていやいやいやいや
何考えてるの私!!
「え・・・っじゃあ本気・・・・なの?」
「・・・・・・・うん」
「だめ・・・かな?」
そんな瞳でのぞかないで!こっちが悪者みたいな気分になるでしょ!?
「・・・・えっとあの・・・私なんかでよければ・・・・っ」
気が付くととんでもないことを口走っていた。
でも、私にあのまま学校の王子をなかせるなんてできなかった・・・。

罪悪感にさいなまれる中、
王子様はこの世のすべての人が救われるような天使の笑顔になり
わたしのこころにより一層重くのしかかったのはいうまでもない。