風呂から上がると、伸びたqの髪の毛をはさみで切った。

「俺のママなんてさ、俺に物乞いをやらせたよ。
少し大きくなったら、売りをやらせたよ。
たまに、パパだっていう男が来て、カマをほって帰っていきやがった」

「そりゃあ、ひどい親だったな」

髪の一束をばっさり切り落とす。

「あんな親ならさ、いない方がましだよ
それで俺、逃げてきたんだ。」

qの幼児性も、破綻した性格も、そんな生い立ちが原因なのだろう。
かける言葉もなく俺ははさみを動かした。

「よし、こんなもんでいいだろう」

正面から見ると、左右非対称だった。

「鏡みせて」

「俺んち、鏡ないんだ。
よく似合ってる。うん。なかなかうまくできた。」

山時代は同胞の頭をよく剃ったものだが、髪を切るのは苦手だ。



ある時、家賃と下のトラットリアのつけを払う金を用意するため、
つぼを覗いた。
空だ。
引き出しも開けた。
空だ。

すぐにqのしわざとわかった。
正直、なんの感情もなかった。
俺の今稼いでる金は、人に幻影を見せてもうけてるあぶく銭だ。
今日の興行が終わればまたつぼはいっばいになる。
だが、これだけの金、いったい何に使ったんだ?