「マジで?
……ありがとう、神田。
これから、俺のこと見ててよ。
最初は友達で良いからさ」
そう言った彼は、爽やかに笑った。
なんだか芸能人のような煌びやかさが見える。
女子に人気なのも、当然なのかもしれない。
そんな無欠な彼が、私のどこを好いてくれたのかはわからないが、取り敢えず彼に嫌われて、只のクラスメイトに戻るっていう最悪の結末は免れたようだ。
心底安心する。
「ごめんな、時間とらせてさ。
一緒に帰ろ?」
「……うん」
初めての誘いに私の心臓は、緊張のせいで呼吸すら苦しくなるほどに、どくどくと鼓動を繰り返す。
気分は、とても軽やかだった。
話す前の、鉛のように重かった心臓は何処にったのだろうか。
私は、一度でも彼が私に文句を言いたいのではないかという疑惑を抱いたことを、心の中で恥じた。
どんよりと曇っていたお気に入りの空。
鉛色の雲は溶けて消えたのだろうか。
今は群青から薄紅への美しいグラデーションを、どこか誇らしげに披露していた。
それはいつもと変わらない夕焼け空なのに、今日は綺麗だと、何故か素直にそう思えた。
きっと、この心境の変化は相模くんのお陰なのだろう。