相模くんは、おそらく彼自身の思いの丈であろう言葉を、ゆっくり言い聞かせるように言った。
私自身、私のことを気にかけてくれる相模くんのことは好きだ。
こんな私のことを好きになってくれたっていうのも、本当は嬉しくて仕方がない。
でも、私が相模くんに対して抱くその好きは、恋愛感情のそれではないと、私はわかっている。
ここで断ってしまったら、もしかすると嫌われて、声すらかけてくれなくなるかもしれない。
それでは私の学校生活の唯一の救いがなくなってしまう。
でも、相手は、そっけない私のことを好きになってくれた優しい相模くんだ。
だからこそ、こんなあやふやな気持ちで恋人として付き合う訳にはいかない。
この一言で二人の微妙な関係は、なかったことになってしまうかもしれない。
私を囲う見えない壁の、相模くんによって壊された跡が塞がってしまうかもしれない。
怖くて仕方がないけれど、自分にも彼にも嘘をつくわけにはいかないのだ。