「それって…」 ―――あ。 希衣の大きな瞳から、一滴の涙が、頬をつたって落ちた。 「私が好きなのは…ずっと律だよ」 きゅ。 細い指が俺のセーターの袖を弱弱しくつかんだ。 「好きでした」 希衣がゆっくり背伸びした、 気がした。 やわらかい唇がそっと触れた。 唇にじゃなくて 頬に。