「希衣!」


…あ。

思わず名前を叫ぶと、真っ黒なさらさらの長い髪を風になびかせて、ゆっくりと少女がこっちを向いた。


俺は動けない。

だって、君があまりにも

あまりにもすっきりしているように見えたから。


一歩、一歩、こちらへ歩いてくる彼女。

そして俺の目の前まで来ると、立ち止まって俺の顔を見上げた。


久しぶりに真正面からみた希衣は、のんだかすごく小さかった。



「わざと、落ちちゃった」




…は?


耳を疑いたくなる言葉に、俺は言葉を失った。