「それだけでここまで走ってきたんだから…他に言うことあるだろ」





「え!?」





急に真剣な顔に変わった猛にあたしは動けなかった。




静かにしのばせる、彼の温かい手があたしの頬に触れる。





「ほら、なんか言うことあるだろ?」





「…言うことあるのは、そっちでしょ」






「あれ、釣れねー。…そっか、俺にあったな」





何よ、謝ることあるとか何とか言ってたくせに…






だけど今なら少し素直に聞ける気がするよ。





「怪我が治ったら。」






「え?」






「ちゃんとお前の前で型をつけるから。」






「ちょ、ちょっとまって?あたしはそんなことが聞きたいんじゃなくて」





あたしの言葉に耳も向けず、猛はその女の子との事情を話し始めた。