「たける、退屈だろうから雑誌と漫画とぉ…」
バサバサと音がする。きっといろんなものいっぱい持ってきたんだろうなぁ。
同居してないとできない芸当。
家族だからって頭で理屈は分かってるのに、同居って聞いただけで胸が締め付けられる。
「ほんとにあの子なんて助けないでよかったのに…」
あたしがここにいることを見透かしたかのように、あたしのことを呟いた。
きっと猛には聞こえてない。
「サンキューな…お前一人で来たのか」
ほら。少しだけ胸が軋んだ。
「んーん、お兄ちゃんとだよ」
相変わらず可愛い声。
ってか、この兄弟にお兄ちゃんがいたのね…。
ちょっと興味あったり。
「ちょ、っと待って下さい!今入るのはっ…!!」
ん?この声は…結衣?
ドアの外から聞こえる騒ぎ声。珍しく誰かと対峙してる?
「ちょっと!あっ…」
ガラガラ
「猛ー、雑誌買ってきてやったぞー」
「あぁ、サンキュー。‘兄貴’」
あたしの心臓が悲鳴をあげた。
猛のお兄さんの声に聞きおぼえがあった。
確かに知ってる。いや、忘れられないのほうが的確かもしれない。
「雛乃、お母さんとこ行っておいで」
「はーい♫」
機嫌良く出て行った南さん。
ちょっと…まってよ…