「わたしは楠くんのお母さんと話してるから…」
それだけ言ってあたしのもとを去って行った結衣。
本当は、一人じゃ怖い。
きっとあたしを見た猛は、呆れてあたしを突き放す。
そんな未来が待ってるのが怖いんだ。
ガラガラ…
勇気を振り絞って302号室の扉を開いた。
「猛…?」
早まる鼓動が、涙腺を緩ませる。
フラッシュバックする舞台の光景。
「…………ん」
カーテンの向こうから静かに小さく、よわよわしい返事。
我慢できないあたしは、ベッドに駆け寄った。
「―――――猛ッ!………―――」
予想もしてないアンタがそこにいた。
ちょっとまって…
「……大丈夫だったか」
「あたしは全然…それより、猛がっ…」
「俺?大丈夫。そんな大した怪我じゃないらしいし」
嘘。
さっきここへ来る前先生が言ってた。
腕と肩の骨折。それから………内臓を少し損傷してるって。
先生は、きっと金属パイプの一部が刺さったんじゃないかって話してた。
なんでそんなウソつくの…?
「ごっ…ごめんね…」
気付けばあたしの目からは大量の涙がこぼれおちていた。
だめだ、辛いのは猛なのにっ…
なのにっ…