文化祭の片付け後、あたしと結衣は猛が搬送された病院へ向かっていた。
話を聞けば、アイツはあたしを突き飛ばして助けてくれたみたいで。
「わたし見たんだよね…」
「え?」
「アンタを突き飛ばした後、わたしのほう向いて、笑ったの」
結衣にサインを送った?
「多分あれは、助かっただろーっていう笑い方だったんだろうな」
猛に対してサバサバしてた結衣が、あたしを気遣ってほほ笑んだ。
「そう、かもね……」
あたしは猛にちゃんと愛されてた。
なんとなくだけど、それが伝わった。
「アンタがあそこまで取り乱してるのも初めて見たし…」
「……。自分でも何したか思い出せないもん」
「ちゃんとした…彼氏だね…」
コクリと頷いた。
よみがえるのは、猛の横たわった姿と…あたしを捨てた最低な男の姿。
あの人とは大違いだねって、きっと結衣は言いたいんだと思う。
「あたしね…」
「うん」
「アイツが好き。だから……」
そこまで言って気がついた。あたしの両頬には冷たくてしょっぱい水が流れていた。
それ以上はなんだか言えなくて、静かに結衣の胸を借りてすすり泣いた。