本来あたしがいるべき場所に猛がいて。
猛がいるべき場所には、誰もいない。
抜け殻になった舞台の幕は急速に下ろされた。
「……愛梨、怪我してない?」
「ん…」
泣くな。今ここで泣いちゃったら、止まらなくなる。
「ねぇ、結衣……」
「なに…?」
静かに、いつもと違う眼差しで優しくあたしの話を聞いてくれてる。
抱きしめてくれた結衣の体も少し、震えていた。
「あたしがいるべき場所に…あたしがいないよ…」
「うん…」
たったそれだけの言葉に、全ての意味を込めて、結衣に言ったつもりだった。
それを静かに受け取ってくれた。
「でも愛梨じゃなくてよかった…ッ…身体震えてるわ、私」
うん。でもね、あたしは、あの時金属に埋もれていたのが あたしだったらと思う。
それを言えずに、
あたしは堪え切れない涙を流した。