なんでかな、怖くて周りの動きがゆっくりに見える。
「―――――愛梨ぃぃっ!!!」
目の端に映ったのは、あたしの好きな人。
あたしを愛してくれた人。
ねぇ、楠。
あの時、あたしなんて放っておいてよかったんだよ?
なのに、意地悪で優しい優しいアンタは
バカなあたしを助けてしまった。
最初から全部、あたしを中心に事は進んでいたんだね。
時間が通常の流れに戻ったのを感じた時だった。
「だから、慎重にやれって…言ったんだよ。んのバカ」
その声にあたしがゆっくりと目を開けた先には…
金属の塊の下敷きになってる楠の姿。
口調は怒ってるのに…息が小さくなっていく。
「た、たけ…る?」
あたしは金属から離れたところへ転がっていた。
さっきまであたしが立っていたところに猛が横たわっている。
「ねぇ、猛ってば!」
返事のない猛のそばには……