愛梨…愛梨って何度も名前を呼んでくれた。
溺れてしまったあたしも猛って名前を呼び続けた。
「髪…乾かしてこなかったのかよ」
「わっ、忘れてた…傷んじゃうかな…」
ギュウ…
きつく抱きしめられる生肌の感覚。
ちょっと、幸せかも。
「そっちのが誘われる……」
汗ばんだ身体が熱を帯びて冷めきらない。
「やらしい顔で 猛キスしてって言ってみろよ…」
「言わないし」
「じゃぁ泣き叫んでもらお」
あたしの部屋の真下、親の寝室。
声を押し殺して、ベッドの軋みをできるだけ潜めて。
あたしは今夜だけ、夢をみた。
「好きだ…」
2人で頂点に達した。
別に…あたしは悪いことをしたわけじゃない。
だけど胸にひっかかるモヤは、少し寂しく感じた。