「…バカ」





「はッ?!おまっ、人が謝ってんのにッ」





「謝ってるアンタにバカって言ってんの!」





目を丸くしてあたしを見る楠はどこか寂しげで、子供みたいな顔をしてた。






「あたしの問題だし、楠には頼らないもん」





「意地張ってんじゃねーぞ…雛乃が今までどれだけ潰してきたか…わかってねーんだろ」





「潰し…?」






楠はあたしを睨んで、次はお前がターゲットなんだ、と小さく呟いた。




静まり返った廊下に不穏な空気が漂う。





「お前は俺の何?」





答えは分かってる。





彼女だって言わせたいんでしょ?





でも、実際そんな関係じゃない。好き同士でもなんでもない。






アンタはあたしをおもちゃ代わりにして、あたしはそれを食い止める、それだけの関係。





何も言えないで黙ってるあたしに楠は静かに視線を落とした。