結衣は相変わらず、髪をいじって楠のほうを見ようとはしない。
あたしは必死に、手の傷を隠した。
「心臓に悪いから…もう。帰ってっ」
「いや、あんさ…デケー声でいえねぇんだけど…」
「何…」
なに、この雰囲気。
珍しい。なんか変に緊張する。
妙に高鳴っていく心臓。
コイツのせいで調子狂いまくり。それに今は早く離れていて欲しい。
怪我バレるのやだし。
「――――――――今晩泊めてくれっ」
「――――はぁ?」
なんでといいたい視線をぶつけてあたしは腕を組んだ。
もちろん、怪我を隠すため。
さっき切った傷が妙にうずいた。